【企業研究 第一回】ピクシブとはなんの会社なのか? これからの10年に必要な人材論 <前編>

pixivコミックが出版業界にあたえたインパクトと今後の展望

 次に、株式会社一迅社・鈴木海斗さん(comic POOL編集部 編集長)、株式会社KADOKAWA・瀬川昇さん( コミック&キャラクター局ジーン編集部 編集長)、株式会社講談社・中里郁子さん(なかよし・ARIA・エッジ編集部 部長)、およびピクシブ株式会社取締役会長・永田寛哲さん、アライアンス統括マネージャー・石井真太朗さんが登壇し、ピクシブが出版業界に対してどのような影響を与えたのかについて、各社の担当者を交えて語られました。

ピクシブ アライアンス統括マネージャー・石井真太朗さん、一迅社・鈴木海斗さん(comic POOL編集部 編集長)、KADOKAWA・瀬川昇さん( コミック&キャラクター局ジーン編集部 編集長)、講談社・中里郁子さん(なかよし・ARIA・エッジ編集部 部長)、ピクシブ 取締役会長・永田寛哲さん

 まずピクシブの試みの前に、現状における出版業界とWeb業界との比較のため、広告市場のデータがあげられインターネット広告が6,497億円あるなか、雑誌広告が958億円にとどまり、現在ネット広告が雑誌広告の6.8倍あるという状況が説明された。また漫画アプリの広告収入については2016年に85億円を突破し、2014年の14億円から急拡大していることも示されました。これは雑誌広告が年々減少している中、アプリという今までにないチャネルの開拓により生まれた特異な市場といえるはずです。

 pixivコミックは現在200万ダウンロードを超え、DAU55万人、作品数3,000を数える中、pixivコミック限定の作品数もその約一割300以上という状況。成長を続け現在の規模にいたった結果、新人賞の投稿の窓口として出版各社から依頼されることが徐々に増えてきたことが、永田さんから明かされます。

 pixivコミックと出版各社とのコラボレーションの歴史としては、KADOKAWAのコミックジーンが最初でした。コラボにより立ち上がった協同レーベルのジーンピクシブは、出版社の漫画の試し読みという側面がつよかったと瀬川さんは語ります。一方で、ジーンピクシブ限定コンテンツの立ち上げを狙っていった結果、現在はコミックジーン本誌よりもジーンピクシブのほうが売上が上となっており、当初は数年赤字を想定していたが、その懸念は杞憂に終わったとのことでした。そんなジーンピクシブの立ち上げを知って「ショックをうけた」というのが鈴木さん。ピクシブに同様の試みができないかと相談し、出来たのがcomic POOLでした。

 話は進み、現状読まれやすいWeb漫画という話題に。傾向としては「pixivユーザー発であること(Web発/フリーゲーム含む)」「共感を得やすいもの(恋愛もの・エッセイ)」「つっこみどころがあるもの(共有したくなるネタ系、可愛い系、食事系)」の3つ。ただどちらかといえば現在は瞬発力による作品構成になってしまっているためか、巻数が続かないことも見受けられるため、物語を膨らます素地をそもそも初動段階でもりこめているかが、今後におけるWeb漫画の成長の鍵となるのでは、とテーマが締めくくられました。

 そしてパートの最後には、pixivと講談社による新コラボアプリの開発が発表され、「新たな商流を作り、クリエイターが漫画で儲ける新しい仕組みを作る」ことが永田さんから明言されました。また今回の試みは、講談社とのコラボではあるものの、仕組みが上手くいった暁には他社にもどんどん開放していく、という点も強調され、今後Web漫画において新たなフェーズの到来を予見させる形となりました。

以上、イベントレポートとなりますがいかがでしたでしょうか。pixivというサービスに関する数々の数値的情報からその規模の大きさを感じていただくことが出来たのではないでしょうか。またその規模を支えていたのは、徹底された小規模チームによる機動性と瞬発力であり、その開発力は今後もクリエイターの創造力を加速させる方向へ使われていくことになりそうです。

記事後編では、ピクシブの人事を担当される丸山さんに、これからの10年を見据えた人材戦略と、今後ピクシブという会社に必要とされる人物像について話を伺ってまいりますのでお楽しみに!

アフターバーティの様子
アフターバーティの様子
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