『進撃の巨人』に学ぶライセンス業務 「何でもやる」が成功の秘訣【AnimeJapan 2023】

アニメ業界に興味のある皆さんは、ライセンス業務についてどれくらい知っていますか?

「ライセンス」という言葉を聞いたことがあるものの、その仕事内容についてはあまりよく分からない、という方も多いかもしれません。

今回は、アニメ業界での「ライセンス業務」について解説するとともに、実際の事例としてAnimeJapan 2023のビジネスセミナーにて講演された『進撃の巨人』のライセンス施策について紹介します。

文:はらぐちかずや

編集:ドキドーキ!編集部


アニメのライセンス業務ってなに?

まず、ライセンス業務とは一体どのような仕事なのでしょうか?

アニメ業界でのライセンス業務は、簡単に言うと「他の会社にアニメの商品をつくる権利を与える」ことです。

世の中には様々なアニメグッズがありますが、その全てをアニプレックスやKADOKAWAといったアニメ会社がつくっているわけではありません。

グッズ制作を専門にしている会社が、アニメのキャラクタービジュアルなどに関わる権利を持っている製作委員会に許可を得てアニメグッズの制作・販売をしています。

グッズの他にも、アニメのコラボカフェや企業とのタイアップキャンペーンなども、すべて製作委員会からアニメの画像や映像などを利用する許可を得ています。

このように、アニメを利用した商品を企画・販売することを商品化(マーチャンダイジング)といいます。

そして、「アニメを使って商売する許可を他社に与える権利」を「商品化権(マーチャンダイジング・ライツ)」といいます。

基本的に、製作委員会のメンバー(特にアニメメーカー)がこの商品化権の窓口を担います。

アニメの関連商品を作りたい会社は、まずこの商品化権の窓口に問い合わせることになります。

これらを具体的に図に表すと、以下のようになります。

(「Newtype Presents アニメ業界就職ガイド」(KADOKAWA) P.71より一部改変)

実務では、グッズの制作会社がつくりたい商品の企画を商品化窓口に申請します。製作委員会から承認が下りると、権利者と使用者の間でミニマムギャランティー(最低保証数量・金額)などの契約が締結されます。

その後、製造元はグッズのデザインを制作し、これが委員会から承認されると、次に製造元はサンプルを制作します。

このサンプルが委員会で承認されると、ようやく製造元は本格的にグッズの製造を開始します。

同時に、使用者はライセンスフィー(ロイヤリティという言い方もある)を窓口を通じて権利者(製作委員会など)に支払います。

アニメのエンディングクレジットに「国内ライセンス」というタイトルがありますが、これは国内で上記のようなライセンス業務(申請の許諾など)を行っている担当者(=商品化権を持つ会社)を指します。

ライセンス業務では、「アニメを使った商品をつくりたい」という他社からの持ち込みに加えて、商品化窓口の担当者が自ら「この作品でグッズをつくってみませんか?」といった営業も行います。

さて、このライセンス業務を現場で行う人たちは、どのようなことを意識しているのでしょうか?

『進撃の巨人』のライセンス施策とは?

ここからは、AnimeJapan 2023のビジネスセミナーにて紹介された『進撃の巨人』のライセンス施策についてお伝えします。

まず、講談社では2010年頃から積極的にアニメの製作委員会に参加するようになりました。

講談社ライツ・メディアビジネス局 ライツMD部の伊藤洋平氏によると、ほとんどの出資作品で、メーカーではなく講談社が商品化権の窓口を担っています。

今年で10周年を迎える『進撃の巨人』。

シリアスなストーリーとは裏腹に、コメディの部分を兼ね備えた企業とのタイアップが多く見られます。

そんな『進撃の巨人』のライセンス方針は「なんでもやる」。

伊藤氏:「ライセンスフィーが安くても基本的にはやります。最初の頃は、作品を営業してもなかなか商品化が決まりませんでした。」

『進撃の巨人』はビジュアルが怖いという印象もあり、当初はグッズ化が難航しました。

ですが、第1期の初回放送から1か月ほど時間が経つにつれて作品の面白さが世間に広がり、「グッズが欲しい」という意見も増えていきました。その結果、ライセンス契約も次々に決まりました。

伊藤氏:「この作品では、はじめに契約獲得に苦戦したこともあり、来る仕事はなんでもやりたいという思いがありました。この経験が『進撃の巨人』のライセンス方針のベースになっています。また、原作者の諫山創先生も『いろんな人に遊んでほしい』と言っていたので、チャレンジングなこともできました。」

『進撃の巨人』はファンが作品を盛り上げる空気をつくってくれるため、少しやりすぎた方が良い反応を得られるそうです。

例えば、シェービングメーカーのSchickとのコラボキャンペーンはその一例です。

(c)諫山創・講談社/『進撃の巨人』製作委員会

『進撃の巨人』はヘビーな物語なのでタイアップの難しさがありますが、このキャンペーンでは本作にある巨人のうなじをねらう設定を髭剃りとして活用しています。

伊藤氏「この企画から本編のセリフを活かしたパロディが増えていきました。シーズン1とシーズン2の間の新作が届けられない期間だったので、新作をみるようにパロディ動画も楽しんでもらえました。」

『進撃の巨人』が放送される前から商品化を担当している伊藤氏は、マーチャンダイジングの役割について以下のように語ります。

「マーチャンダイジングとは、キャラクターを二次利用するということだけではなく、作品が日常の中に入っていくことだと思います。アニメに興味がなくても、日常に溶け込んでいる国民的アニメのキャラクターを知っている人は沢山います。私たちも、その状態を目指したいです。接点は多ければ多いほうがいいので、間口を広くしています。」

「『進撃の巨人』のような作品寿命が長いタイトルにおいて、マーチャンダイジングは作品を動かすエンジンです。新しいアニメが次々に出てきている中、マーチャンダイジングをきっかけに、新しい人にも作品を見て欲しいです。決して、お金を稼ぐことだけが目的ではありません。」

マーチャンダイジングはアニメの二次利用として制作費を回収する手段だけではなく、作品を世の中の多くの人たちに知ってもらうという宣伝の面も兼ねているのです。

どうやったらライセンス業務を仕事にできるのか?

こういったライセンス業務を行う企業は、アニメ業界ではKADOKAWAやANIPLEXなど、自社で作品に関する権利を有している大手企業です。

作品に関わる権利を持たない制作会社ではライセンス業務はできません。京都アニメーションやMAPPAなど有名スタジオが自社制作の作品に出資するようになったのも、いわば自社で作品の権利を保有しライセンス業務によって収益を得るためです。

国内で商品化権を持ちライセンス業務を行っている会社は、例えばアニメグッズの裏に貼ってあるライセンスシールなどを見て判断できます。

ライセンス業務を仕事にしたいと考えている方は、今どんな企業が自社で作品の権利を持っているのか、もしくはそういったことができるようになる可能性があるのかを調べてみるといいでしょう。

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