ワクワーク2025出展企業 リレーインタビュー⑦ GATOON 代表取締役 茂木崇史様

本インタビューは3/20(水・祝)に開催したアニメ業界就職フェア「ワクワーク2025」の出展企業に、今年の採用に関する詳細をお聞きしたものです。

ーーーーーーーー

 ワクワーク2025出展企業インタビュー企画第7弾として、WEBTOONの制作会社「GATOON(ガトゥーン)」の代表 茂木崇史様にインタビューを実施した。アニメ制作に関わるアスラフィルムから派生したWEBTOON制作会社が現在どのように制作をおこなっているのか、および今後の組織づくりにおける今年の採用がどういった意味を持つのか、などお聞きしたので、ぜひとも注目いただきたい。

ーーワクワーク2025へのご参加、ありがとうございました。ダイレクトにアニメに関わる企業が集まる中で、WEBTOON制作会社としてのご出展でしたが、参加した学生たちの反応はいかがでしたか。

茂木崇史様(以下、茂木):弊社のブースには誰も来ないかも……と正直心配していましたが、想像以上にブースに来てくださり安心しました(笑) アニメスタジオ各社様と比べると小規模かもしれませんが、ブースにお越しいただいた皆様は、具体的な目的意識を持っており、とても熱心に話を聞いてくださいました。結果的に一人一人の名前も全員覚えるくらい話ができたので、参加できて良かったです。

ーーそうおっしゃっていただき光栄です。それでは改めて、GATOONという会社の成り立ちについてお話をお聞きできますか。

茂木:アスラフィルム代表の望月重孝が「マンガを今の時流にあわせてアップデートしていきたい」と考えたことをきっかけにして、2020年にGATOONが設立されました。

 あくまで「マンガのフォーマットとしてのアップデート」がコンセプトだったので、最初からWEBTOON制作を目的に立ち上げたわけではなく、実際に事業の初期段階ではYouTube向けのマンガ動画の制作が中心でした。

 事業を進めていく中で、作品を現場で回すメンバーが必要となり、2021年4月頃から本格的に私も代表およびプロジェクトマネージャーとして参加することとなり、あわせてオリジナルのマンガ動画の制作を開始しました。

 ただ、時代の潮目としてWEBTOONが徐々に人気になってきたため、弊社もWEBTOON制作に事業の舵を切りました。オリジナルのマンガ動画制作をそのまま続ける、ということも出来たのですが、営業が功を奏しWEBTOON制作の受託案件が一つ、また一つと決まり始めたこともあって、WEBTOONに集中する決断をしました。

 受託にしろオリジナルにしろ重要な制作機能をしっかり磨き上げ、「しっかりとしたクオリティと納期を守りながら作品を制作できる会社」を目指すことにしたのです。現在はWEBTOONの制作機能を質量ともに高めている状況です。

ーー現在何人ほどのチームでWEBTOON制作をされているのでしょうか。

茂木:社内スタッフは合計10人体制です。そのほかに業務委託で10人ほど参加していただいており、チームとしては20人ほどですね。全体的な年齢も若く、ほぼ全員20代です。WEBTOONを楽しむ若い世代に制作チームに参加してもらい、業界の新しいスタンダードを若いメンバー中心で作っていきたいと考えています。

ーーワクワーク2025にご出展いただきましたが、新卒も積極的に採用しているのでしょうか。

茂木:はい。2023年4月に新卒で4人を採用しましたし、2024年4月にも5人採用しています。現状10人(※インタビューを実施した4月時点)という会社の規模感からすると、新人採用についてはかなり積極的に行っていると言えるのではないかと思います。

 去年4月に入社したメンバーは、イラスト制作のクオリティがとても高く、弊社としては大変助かりました。ただ、そんな若者がなぜ、実績もあまりない弊社に入社してくれたか聞いたところ、そもそもイラストレーターを募集している会社があまりない、という話でした。

 アニメスタジオの場合は、若手はまず動画からキャリアが始まり、一人前になるのに2〜3年かかると一般的に言われています。求められる職能や本人の適性もあるので一概には言えませんが、イラストをある程度描ける方なら、WEBTOONの現場では数か月で戦力になれます。「絵を描くことを仕事にしたい」と考えた場合、WEBTOONはクリエイターの卵が活躍できる場所として良い選択肢の一つになるのではないかと思っています。

ーーアニメ業界を志望する方にとって、WEBTOON業界は隣接する業界として考えて問題ないのでしょうか。

茂木:WEBTOON制作は、アニメ制作ととても近いと思います。WEBTOONはいわゆる漫画家が1人で書き上げるものというより、大人数での分業が前提となっており、アニメの作り方に近いのです。WEBTOONではシナリオを書く人、シナリオをもとにネームを描く人、キャラクターの線画を描く人、背景を描く人、着彩する人というように分業制です。

 とはいえそこはマンガなので、WEBTOONは4〜5人いれば、分業体制が成立します。アニメを制作するとなったら、参加メンバーは100人でも足りませんので、大分コンパクトなチームで制作に取り掛かることもWEBTOONの特徴です。WEBTOONの現場では、クリエイター、制作進行、どちらにとっても関わるメンバー全員に目を配れる働き方となるので、若手のスタッフのキャリアステップを考えるうえでも、とても良い仕事だなと感じています。

ーーアニメはすでに何十年も歴史のあるコンテンツですが、WEBTOONはここ10年で出来た比較的新しいコンテンツだと認識しています。現状とても勢いがあるように思いますが、5年後、10年後も同じ規模感で仕事があるかどうか、不安な学生も多いのではないでしょうか。

茂木:おっしゃるとおり、WEBTOONは現在進行系で成長中のエンタメです。全世界レベルの市場規模は毎年10%以上伸びています。国内市場については同等程度の伸びではないですが、それでも堅調に伸び始めているので、WEBTOONというコンテンツは間違いなく10年後も存在し続けていると思います。

 さらに制作現場の話をさせてもらいますと、現状作品需要に対して制作人口が追いついていません。具体的に言えば、WEBTOONを制作してほしいと考えている会社はあっても、その注文を受けられる会社が足りておらず、制作実績がしっかりとした会社であれば、仕事がいくらでもある状況です。ありがたいことに、弊社も一度ご一緒させていただいたクライアントから、「別の作品もよろしくお願いします」と毎回お声がけをいただいています。

 ただ、だからといって弊社がWEBTOON制作にのみこだわっているかといえば、必ずしもそうではありません。今後も時流にあわせて求められるコンテンツの形はどんどん変わっていくと思いますが、そこに合わせて弊社の作画制作機能も変化していくことが重要だと思っているからです。

 弊社のコアはあくまで作画制作機能であり、それはつまり弊社のメンバー自身です。コンテンツの形は今後も変わっていくと思いますが、「描く」という根源的な仕事は絶対になくならないので、最終的な納品フォーマットと自分たちのやる仕事をいかに調整していくか、という話になると思います。

ーー作画制作機能が重要というお話ですが、新卒を積極的に採用していることと、何かしら関連はあるのでしょうか?

茂木:密接に関係しています。

 まず大前提として、弊社はフルリモートで制作を行っております。メンバーが現状、青森、宮城、埼玉、東京、京都、大阪、兵庫、鳥取と日本中に散らばっており、原則オンラインでコミュニケーションを取ることになります。そのため、デジタルネイティブな若い世代の方のほうが環境適応性が高く、新卒採用にこだわっているという側面があります。

 また業務時間も一日8時間稼働と、固定しています。毎日コンスタントにアウトプットをする、ということにはじめから徹底して慣れていただくことが重要だとも思っておりまして、以前、中途採用も実施したのですが、それまでの経験や感覚からアウトプットの量にむらが出てしまうことが多かったです。そういう面でも、新卒の方にまっさらな状態で入社していただき、継続的・安定的にアウトプットをする、ということに慣れていただきたいと思っています。

ーーまずは量を優先する、ということですね。

茂木:そうです。その一方で、クオリティの底上げについては、個人の技量に寄ってしまうので、まだ明確な答えは出ていません。現状は、クライアントからのフィードバック、つまり修正依頼に対応し、求められるクオリティを達成することで経験を積み上げ、全体的な技術の底上げを行っています。

 アスラフィルムのメンバーもアドバイザーとして入っているので、並行してアニメスタジオ研修という形での育成も行っています。すでに昨年採用したメンバーが先輩社員として育ってきておりますので、今年、来年と採用させていただいた方には、より実戦的なノウハウを蓄えた育成環境が提供できると思います。

ーークライアントからのフィードバックをもとに成長をしてほしい、ということは「自分自身で成長材料を見つけられる人物」を採用したい、ということでしょうか。

茂木:仰る通りです。クライアントからいただいた設定やフィードバックをもとに、自分なりにどうすべきか考えて、最終的にマンガとして形にできるようになってほしいです。現状の会社規模だと、どうしてもすべてを手取り足取り教えることは出来ません。現状のスキルがすごいかどうかよりも、自分からどんどん成長していけるかどうかを重視して採用したいと考えています。

ーーなるほど。そういった人物像を採用するうえで、茂木さんは面談をされる際、志望者のどういった点を重点的に確認されますか。

茂木:クリエイティブ職を志望される方に関しては、ポートフォリオのクオリティはもちろんですが、それ以上に重視するのは制作時間です。どれだけクオリティが高いイラストが描かれていても、制作期間が1ヶ月なのか、1週間なのか、1日なのかで評価は大きく変わってきます。先ほどお伝えしたとおり、弊社ではまずアウトプットの量を重要視する考えのため、一球入魂という方よりは、毎日たくさんイラストを描かれていることがわかる方を採用することになると思います。

ーーAIのプロフトエンジニアという特殊な職種も募集されていますね。

茂木:はい。現状のAIを使って、綺麗な一枚の絵をつくることは可能なのですが、再現性が取れず、現場投入するのはまだ難しい段階です。それでも、特定のキャラクターを、いろいろな構図で再現する方法が、少しずつ見えてきたかなとも思っており、WEBTOONの現場では今後実験的にAI制作を導入していくことになると思います。そのため現段階から将来を見据えて、エンジニアとして一緒に研究してくれる方を募集しています。

ーーありがとうございました! 最後に、新卒の方に向けてメッセージをお願いします。

茂木:WEBTOON業界は現在、すごい勢いで環境が変化しています。アニメ以上に市場が拡大しており、制作環境も日進月歩で変わっていっています。激動の変化を恐れずに、GATOONのメンバーとともに成長をしてくださる方を募集しています。

 私自身も、40歳になってからエンタメ業界に飛び込んできましたので、ある意味新卒の皆さんと変わらないと思います。そんな自分が代表を務めている会社ですので、気負わずに飛び込んでもらえたらと思います!

GA!TOON 採用情報:https://sites.google.com/view/gatoon-webtoon/

会社情報:
 社名:株式会社GATOON
 創業:2020年11月13日
 本社住所:〒166-0015 東京都杉並区成田東5丁目20-10

(Visited 236 times, 7 visits today)