連載第4回 アニメ制作で使用するツール・テクノロジー 〜アニメーション制作支援の各種最新技術①〜

連続記事第4回、アニメ制作で使用するツール・テクノロジー。今回は、ついに制作支援の最新技術についてご紹介します!(やっとここまできた。。。)

紹介したいものが少し多いので、記事を2つに分けて紹介していきます!最新技術の多くが実験段階、もしくは現場での要求を満たしていない段階ではありますが、制作の効率化や、制作幅の拡張をもたらしうる可能性を最新技術は秘めています。

まずは、彩色技術からです。

自動彩色技術

アニメの制作においては、仕上げの工程があり、そちらで彩色が行われていますが、色に関する知識や指示を正確に表現する必要があり、なかなか上手に塗るのが難しいものです。

また、上手に色を塗ることはその作品の出来にも影響を与えるため、アニメだけでなく、イラストを描く多くの方にとっても悩みの種の一つでしょう。

そんな中、日本では、イラストSNS最大手であるPixivとディープラーニングの研究と開発をおこなうPreferredNetWork(あまりご存知ないかもしれませんが、未上場スタートアップで日本で一番の企業価値を示している会社!)が2017年1月に共同開発したPetalicaPaint(旧:PaintsChainer)は、リリースされると同時に自動彩色の性能の高さから絵師たちを中心に大きな反響がありました。


PetalicaPaintHPより

その他にも、定番お絵かきソフトのClipStudioPaintの自動彩色機能(先行プレビュー機能)、スマホで簡単に自動彩色が可能なアイビスペイント、アニメ制作会社であるオー・エル・エム・デジタルとIMAGICAを中心としたグループなど多様な会社が開発に取り組んでいます。細部の調整などの機能を実装している会社もあり、今後の発展にさらに期待です。

自動背景生成技術

新海誠や宮崎駿作品の自然美豊かな背景などを観ていると惚れ惚れします。実際、アニメの作画においてキャラの絵だけが重要ではありません。

そうです、背景も重要ですよね。

ただ、実際問題、上の作品のような背景を描くのは至難の技ですし、例えばご当地ものでロケハン時に撮影した写真をもとにラフ画に落とすのも背景の場合は大変なもの。そんな場面に使用が期待されるのがこの技術。

早稲田大学森島研究室のインタビュー記事より

これは、実際の風景写真描きたい雰囲気の背景絵をインプットして、人工知能を用いて処理することで、風景写真を瞬時にアニメ絵にするもの。

例えばこのような技術が完成すれば、ロケハン地で瞬時に写真をイラストに落とすことができ、作品作りの材料や刺激になるかもしれませんね。他にも、スケッチを高速でイラスト化する技術なども開発されているそうです。

アニメーションの自動生成

1枚絵からのアニメーション化

例えば、現在のアニメーションでは、キャラが動かず話しているだけのシーンでは、動画作業で口の動きに合わせて新たな絵を描くことになります。そんな作業の効率を図ることが期待されるのが、

音声をいれるだけで、キャラがまばたきしたり、口を動かしたりさせる技術。

この技術のおかげで、アニメだけでなく、ゲームのキャラクターのアバター化の作業削減やコスト削減につながる可能性が高いです。

他にも、Live2Dというソフトでは、2Dイラストをパーツに分けて、別々にレイヤーに保存することで、キャラを立体的に動かすことを可能にしています。実際この技術は注目されており、Live2Dは2018年にアニプレックスと業務提携を結び、共同で長編アニメーション映画を製作中です。

自動中割り技術

現在、原画を描いた後、中割りである動画作業はアジアを中心とした海外の会社に外注する場合が多いです(実際、現在のコロナ情勢は、アニメ業界のこの部分に大きな影響を与えています)。

この中割り作業の自動化を目的としたソフトで有名なのが、シンガポールで開発されたアニメーション制作ソフト「CACANI(カカーニ)」です。

実際に、「炎炎の消防隊」や「ジョジョシリーズ」などの制作を手掛けるデイビッド・プロダクションは作品の一部にCACANIがクレジットされています。これは、2018年にCACANi社と研究開発のパートナーシップを結び、積極的に同社の制作に導入しているからです。また、他にも実写動画の中間フレームを自動生成する「Frame Interpolation」という技術を有していたDeNAがこの技術を基に「アニメの中割り」自動化にもチャレンジしています。

文章からのアニメーション生成

これはかなり突飛な技術ですが、なんと文章で描きたい状況を記述すると、自動でアニメーションを生成する技術

シアトルにあるアレン脳科学研究所とイリノイ大学アーバナ・シャンパーン校の研究チームがアメリカで放映されていた「原始家族フリントストーン」を使い、コラージュによるアニメーションを生成させる学習AIを作ったそうです。まだミスも多く、近いうちに映像業界の仕事を奪うことはなさそうですが、支援ツールとしてクリエイターの創造力を刺激する存在になるかもしれません。

今回は、最新技術の紹介前半パートでした。次回後半で、全体を踏まえたまとめについて書ければと思いますが、どの技術も現状の商業アニメーションの仕事を奪うものではないものの、近いうちに強力な支援ツールになることは間違いないでしょう。

また、このようなツールの進歩は、アートアニメーションの分野などの少数でできる作業量に限界があった個人作家の作業の効率化や、可能性の拡張に寄与することは現在や将来にわたって、確実なものといえるでしょう。

<ライター:浅井恵斗、 編集:数土直志>

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