連載第4.5回 アニメ制作で使用するツール・テクノロジー 〜ビデオコンテ 〜

アニメ制作で使用するツール・テクノロジー全5回はこちら。

第1回「アニメ制作で使用するツール・テクノロジー〜連載第1回 アニメーション技術の歴史〜」

第2回「アニメ制作で使用するツール・テクノロジー 〜連載第2回 ツール編〜」

第3回「連載第3回 アニメ制作で使用するツール・テクノロジー 〜制作工程のデジタル化〜」

第4回「連載第4回 アニメ制作で使用するツール・テクノロジー 〜アニメーション制作支援の各種最新技術①〜」

第5回「連載第5回 アニメ制作で使用するツール・テクノロジー〜最新技術②と技術の今後について」

昨日、最後の連載記事を投稿したばかりですが、調整上の問題ではみ出してしまったテーマがありまして……昨今のアニメーション製作の潮流を踏まえるとこれは外すわけにはいかないと思い、本来の投稿順番を考えると4回と5回の間の想定をしていたので、この度「第4.5回」として投稿させてもらいます。

テーマは「ビデオコンテ」です。

ビデオコンテ

現在、日本でつくられる各アニメ作品の製作費は世界的に見ると高いものではありません。確かに、海外配信プラットフォーマーの進出や、働き方改革などでより高額な製作費がかけられることも増えてきました。

しかし、この状況がどの程度の期間続くか分からず、安定した制作費の確保は制作スタジオが持続的な経営をおこない、よりよい作品を作っていくために必要不可欠でしょう。

その点で、スタジオやクリエイターにとって「ビデオコンテ」(他には、「Vコン」やCG業界では「プリビス」と呼ばれるものです)は非常に強力な味方になるでしょう。ビデオコンテとは、アニメの設計図である絵コンテを動画の形で表現たものです。

となりのトトロ 絵コンテ amazon販売ページより

「君の名は。」Blu-ray&DVD販売記念 オープニング ビデオコンテ

ビデオコンテの魅力は、コンテからストーリーをイメージしやすいところです。日本における現在のアニメのほとんどは、製作委員会方式を取っており、多くの関係者から出資金を募っています。プリプロの段階で、製作委員会に入っている全会社がコンテをチェックすることは現実的ではありませんが、少なくとも幹事会社は企画の構想と実際のストーリー&演出が合致しているか確認します。

しかし、絵コンテの読解は難しい場合も多く、また自身の解釈が間違っている可能性も考えてしまい、内容に関する指摘は難しいものです。

対して、ビデオコンテは、時間の概念が入るため、設計図よりずっと完成系に近づきます。実際には、絵がカットごとの秒数に合わせて動き、また簡単な音声も挿入されています。そのため、設計図の意図を監督以外の関係者も含め理解するハードルがぐっと下がり、より建設的な議論がプリプロの段階でできるのです。

さらに、コンテの修正に関して、ビデオコンテは優れたパフォーマンスを発揮します。絵コンテでは、カットの尺を変更したり、カット数を増やしたり減らしたりする場合、絵だけでなく文字も変更するなどが必要で、比較的手間が多いことが一般的です。一方、ビデオコンテの場合は、容易に絵を描いて、配置を動かすことができるため、作業効率が大きく上がるのです。

絵コンテとビデオコンテを作成するデジタルツール

現在、日本で使用されているビデオコンテ用ツールは海外製が主で、特にStoryboardProが多くのユーザーに使用されている印象です。

また、出資者への説明や、投資家へのプレゼンだけでなく、制作の質にも貢献できるのがビデオコンテの魅力です。

最後に、「君の名は。」や「天気の子」の新海誠監督のインタビューを締めの言葉とします。

「こういうのを見ると例えば絵を描くスタッフじゃなくても作品に対しても意見がいくらでも言えますよね。単純に、「早すぎる」とか「遅すぎる」みたいなスピード感も含めてそうだし、あと「面白い」「面白くない」みたいなものも。」(引用:ToonBoom HP 「Storyboard Proには絵コンテに必要な機能が過不足なく入っている」)

参考:ToonBoom HPブログ https://blog.toonboom.com/ja/動画コンテビデオコンテとは直感的に理解できる絵コンテ

<ライター:浅井恵斗、 編集:数土直志>

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