国を超えたアニメの共同制作を成功させる秘訣とは?【TIFFCOM 2023レポート】

2023年10月25日〜27日にTIFFCOM 2023(東京国際映画祭併設コンテンツマーケット)が開催された。当イベントにはアジアのエンタメコンテンツを求めて、世界各国から多くのバイヤーが来場した。本記事では、会期中に開催された「中国・日本映像産業における協力に関するフォーラム」に注目し、なかでも日本と中国におけるアニメの共同制作に注目する。

執筆:はらぐち かずや
編集:ドキドーキ!編集部

日本のアニメ産業で存在感を増すbilibili

中国の配信サービスbilibiliは近年、日本のアニメ製作委員会で幹事会社を務めている。同社から、アニメ事業を担当する亢越氏(bilibili動画中心海外業務総監)がイベントに登壇した。

亢氏によれば、bilibiliは2000年頃から日本のアニメを輸入してきた。タイトル数は3,000を超え、中国で視聴できるアニメ作品の9割はbilibiliで配信されている。

亢氏「中国と日本の視聴者が同じタイミングで、クオリティの高いアニメを楽しめるよう作品を調達したい。クオリティの高いアニメを配信することが私たちの目標であり、すべてのビジネス展開の基礎になっている。」

また、亢氏はbilibiliの強みについて以下のように説明する。

bilibiliが他のメディアと違うところは、正規の作品だけでなく二次創作を取り扱うという点である。bilibiliには若年層のユーザが多く、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の投稿が盛んである。

同社のサプライチェーンは長く、アニメ配信のみならずコミックやイーコマースのプラットフォームも有している。近年はコンサートも開催している。アニメの放送はサプライチェーンの第1歩であり、その後にIPを活用して様々なビジネスを展開できる。

bilibiliが主催するアニメイベント「BILIBILI WORLD2023」 (東映アニメーションのWeiboより)

bilibiliは2017年から、中国の国産アニメの制作にも注力している。既にbilibiliやテンセントは、50~60作品もの国産アニメを生み出している。

同社はこれまでも日本のKADOKAWAやTOKYO MXと協力し、アニメ作品を製作してきた実績がある。

亢氏は「今後も日本の企業とともに海外市場を開拓していきたい」と言う。

bilibiliが製作したKADOKAWA原作のアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』
(C)bilibili(C)Kaisei Enomoto, Syugao / KADOKAWA 2022

bilibiliは日本アニメの配信から始まり、今では日本のアニメ作品に出資するほか共同制作も手掛けるようになった。

亢氏「日本から中国への一方通行ではなく、双方向でマーケットを拡大していき、ウィンウィンな状態を目指したい。ともに良い作品をグローバルで盛り上げ、アジアのプレゼンスを高めていきたい。」

アニメの国際共同制作で重要なポイントとは?

日本側のスピーカーとして、アニメ専門のテレビチャンネル「AT-X」で代表取締役社長を務める川崎由紀夫氏が登壇した。

川崎氏「私は25年間、アニメを世界中に届ける仕事をしている。配信の時代になって、日本での放送直後に世界中へコンテンツを届けられるようになった。

私たちの仕事は、世界地図を広げて放送・配信されていない地域の穴を埋めていくという、ジクソーパズルのような仕事である。近年、全世界にすぐにコンテンツを届けられるようになってきた。」

テレビ東京は2020年、中国でアニメの共同制作を行う現地法人「杭州都之漫文化創意有限公司」を設立した。

川崎氏は、共同制作において両方の国で作品をヒットさせることは難しいという。それぞれの国でマーケットやビジネスを熟知しているパートナーが、互いに経験や知識を出し合い成功を目指すべきだと指摘する。

そのうえで、お互いの市場の特性(スペシャリティ)をストーリーやキャラクターの要素の中に散りばめていくということが大事だという。どちらの国のファンにとっても中途半端な内容になっていると、良い結果を生まないことが多い。

また川崎氏によれば、アニメの共同制作では制作体制が一番のポイントである。

「中国では3DCGの規模が大きく制作スピードが非常に早い。一方で日本には、漫画制作で培われたファンのニーズをすぐに捉えて作品の内容に反映させるノウハウがある。共同制作では、各々の良さである3DCGや、ファンのリアクションを作品に反映させる速さを活かすことができる。」

コンテンツのボーダレス化

最後に、bilibiliの亢氏は今後のIPへの関与について以下のように述べる。

「映像は放送・配信して終わりではなく、サプライチェーンとしてキャラクターを活用した様々なビジネスが行える。そのため、徐々ではあるが日本のコンテンツ制作に深く関わっていきたい」

昨今の日本アニメには海外企業が多く製作委員会に参加している。そして、両国においてIP認知の拡大やそこから得られる収益の増加を目指している。お互いのパートナーの強みを活かすことで、IPの可能性を広げることができるだろう。

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